延長された心(えんちょうされたこころ)
最終更新:2026/4/19
延長された心とは、認知科学において、人間の認知能力が身体の外にある道具や環境にまで拡張される現象を指す。
別名・同義語 外部認知身体化された認知
ポイント
この概念は、道具の使用が単なる補助ではなく、認知プロセスそのものを変化させるという考えに基づいている。記憶や思考の外部化を可能にする。
概要
延長された心(Extended Mind)は、1998年にアンディ・クラークとデイヴィッド・チャルマーズによって提唱された認知科学の理論である。従来の認知科学では、心は脳内に限定されると考えられていたが、この理論は、認知プロセスが脳だけでなく、身体や環境を含む外部世界にまで広がっている可能性を示唆する。
理論的背景
延長された心の理論は、以下の3つの主要な原則に基づいている。
- 認知プロセスは、情報処理である: 認知プロセスは、情報の獲得、保存、変換、利用といった情報処理として捉える。
- 情報処理は、物理的なシステムで行われる: 情報処理は、脳だけでなく、身体や環境を含む物理的なシステムで行われる。
- 認知システムは、境界が明確ではない: 認知システムは、脳と身体、環境との境界が明確ではなく、相互に影響しあっている。
具体例
延長された心の具体的な例としては、以下のようなものが挙げられる。
- ノート: ノートに情報を書き出すことで、記憶の負担を軽減し、思考を整理することができる。ノートは、脳の外部記憶装置として機能していると言える。
- スマートフォン: スマートフォンは、電話帳、カレンダー、地図など、様々な情報にアクセスできる。スマートフォンは、脳の外部情報源として機能していると言える。
- インターネット: インターネットは、膨大な情報にアクセスできる。インターネットは、脳の外部知識ベースとして機能していると言える。
批判と議論
延長された心の理論は、認知科学界で大きな議論を呼んでいる。批判的な意見としては、以下のようなものが挙げられる。
- 認知の範囲の定義の曖昧さ: どこまでを認知システムと見なすかの境界が曖昧である。
- 脳の役割の軽視: 脳の役割が軽視されているという指摘がある。
- 意識の問題: 延長された心における意識の所在が不明確である。
しかし、延長された心の理論は、従来の認知科学の枠組みを超え、人間の認知能力をより深く理解するための新たな視点を提供している。