燃え尽き症候群(もえつきしょうこうぐん)
最終更新:2026/4/11
過度な意欲で活動に取り組んだ結果、心身が極度に疲弊し、意欲喪失や自己評価の低下を招く心理的・身体的な状態のこと。バーンアウトとも呼ばれる。
別名・同義語 バーンアウト燃え尽き
ポイント
単なる一時的な疲れではなく、仕事や介護などの対人援助職において慢性的ストレスが蓄積し、感情の枯渇が引き起こされる職業性症候群である。
概要
燃え尽き症候群(バーンアウト)は、心理学者のハーバート・フロイデンバーガーが1970年代に提唱した概念である。もともとは医療や福祉などの対人援助職において、献身的に仕事に取り組んでいた人物が、理想と現実の乖離や過酷な環境から心身のエネルギーを使い果たし、無気力状態に陥る現象を指していた。今日では、ビジネスパーソンや学生、育児中の親など、高い目標や責任感を持って活動するあらゆる層に見られる社会的な課題となっている。
この状態に陥ると、当初の熱意は霧散し、対象者に対して冷淡な態度をとるようになるほか、自身の能力に対する過小評価が強まる。放置すると抑うつ状態や適応障害などの深刻な精神疾患へ発展するリスクがあるため、早期の自覚と環境調整が重要視されている。
主な特徴・機能
- 情緒的消耗感:精神的なエネルギーが枯渇し、これ以上人々と関わる余裕がないと感じる状態。
- 脱人格化:対象者(顧客や患者など)に対して無関心、あるいはシニカルで冷淡な態度をとるようになる対人関係の変化。
- 個人的達成感の低下:仕事における自身の成功や貢献を過小評価し、無力感や有能感の欠如を抱くこと。
- 身体的症状:不眠、頭痛、めまい、慢性的な疲労感や食欲不振など、心身相関的な不調。
歴史・背景
1974年に米国でフロイデンバーガーが、薬物乱用者の支援を行うボランティアが疲弊する様子を観察し「Burnout」と定義したことが始まりである。その後、社会心理学者のクリスティーナ・マスラッハらが研究を深め、1981年に「マスラッハ・バーンアウト尺度(MBI)」を開発したことで、客観的な診断・評価が可能となった。近年では、WHOが国際疾病分類(ICD-11)において「職業上の現象」として定義し、単なる疲労を超えた労働環境の問題として認知されるようになった。
社会的影響・応用事例
- 医療・福祉現場:看護師や介護職において、深刻な人手不足と高い責任が重なり、離職の主因となっている。定着率向上に向けたメンタルヘルス対策が急務である。
- 企業経営:長時間労働が常態化する企業において、有能な社員が突如として意欲を失うことは生産性の低下を招くだけでなく、組織の士気に深刻な影響を与える。
- 教育現場:教職員が過度な業務量や保護者対応に追われ、生徒への共感性を失い、教育の質が低下する事例が報告されている。
関連概念
- 抑うつ状態:気分の落ち込みや意欲の低下が持続する状態。燃え尽き症候群から発展しやすく、専門医による診断が必要となることが多い。
- 慢性疲労症候群:半年以上続く原因不明の強い全身倦怠感を特徴とする疾患。身体的要因が強く、燃え尽き症候群とは区別が必要とされる。
- ワーク・エンゲイジメント:仕事に対して活力と熱意を持ち、没頭している状態。燃え尽き症候群の対極にある概念として、ポジティブ心理学で注目されている。