培養肉(ばいようにく)
最終更新:2026/4/11
生体から採取した幹細胞を培養液中で増殖・分化させることで、動物を殺傷せずに製造される食肉。細胞農業によって生成される代替タンパク質の一種。
別名・同義語 クリーンミート細胞由来肉
ポイント
従来の畜産に代わる次世代のタンパク源として期待される。環境負荷の低減や倫理的課題の解決策として世界中で研究開発が加速している。
概要
培養肉(Cultured meat)は、動物の筋肉幹細胞を細胞培養技術を用いて人工的に増殖させ、食肉として構成した製品である。家畜を飼育して食肉を得る従来の畜産プロセスとは異なり、体外の培養環境下で細胞を組織化するため、「クリーンミート」や「細胞由来肉」とも称される。
本技術は、食糧安全保障、動物福祉、および環境保護の観点から注目されている。特に畜産業が排出する温室効果ガスや、広大な土地・水の利用という環境的制約を緩和する切り札として、世界各国のスタートアップ企業や研究機関が実用化を目指している。
主な特徴・機能
- 動物を殺傷せずに生産できるため、動物倫理の問題を解消できる。
- 従来の畜産と比較して、土地利用率や水の使用量を大幅に抑制できる。
- 栄養成分や脂質の構成を意図的に制御することが可能である。
- 工場生産的な形態をとるため、従来の食肉供給に比べ疫病リスクが低い。
歴史・背景
1930年代のウィンストン・チャーチルによる予言から始まり、2013年にオランダのマルク・ポスト教授が世界初の培養肉ハンバーガーを公開したことで技術的実現性が証明された。当初は莫大な製造コストが課題であったが、近年は培地の低コスト化や大規模なバイオリアクターの開発により、商業化に向けたマイルストーンが着実に達成されている。
社会的影響・応用事例
- シンガポールは世界で初めて培養肉の販売を承認し、一部のレストランで提供が開始されている。
- 日本では農林水産省が「細胞農業」の推進を掲げ、民間企業と連携して培養肉の安全性基準や表示ルールの策定に向けた議論を主導している。
- 食品テック企業による鶏肉、牛肉、フォアグラの培養開発が進み、高級食材から一般流通品への展開が模索されている。
関連概念
- 代替タンパク質:植物性肉や昆虫食、微生物由来のタンパク質を含む、食肉に代替する食資源の総称。
- 細胞農業(Cellular Agriculture):細胞培養技術を用いて、肉、牛乳、卵などを農場を通さずに生産する産業技術。
- 組織工学:細胞の増殖と分化を制御し、生体に近い組織や器官を構築する工学的手法。